領域別医療情報

血友病

【血友病とは】血友病の遺伝形式

,
,

血友病はX染色体上にある、第Ⅷ因子(FⅧ)もしくは第Ⅸ因子(FⅨ)をコードする遺伝子の変異による出血性疾患で、X染色体連鎖劣性遺伝形式をとり、母親から男子に伝播するため、一般的に、患者は男性となる。

保因者(carrier)を「2本のX染色体(対立遺伝子)のうち、1本に血友病の病因遺伝子変異を持つ女性」とすると、図A~Cの伝播様式をとる。

A:父親が正常で、母親が保因者の場合

男子は、父親からのY染色体と母親の変異のあるXm染色体もしくは変異のないX染色体のいずれかを受け継ぐため、生まれてくる男子の1/2が正常もしくは血友病患者となる。女子は、父親のX染色体と母親のX染色体のどちらかを受け継ぐため、生まれてくる女子の1/2が正常もしくは保因者となる。

B:父親が血友病患者で、母親が正常の場合

父親のY染色体と母親の1本のX染色体を受け継ぐため、生まれてくる男子はすべて正常である。女子は、父親の変異のあるXm染色体が受け継がれるため、生まれてくる女子はすべて保因者となる。

C:父親が血友病患者で、母親が保因者の場合

父親からのY染色体と母親からの変異のあるXm染色体もしくは変異のないX染色体のいずれかを受け継ぐため、生まれてくる男子の1/2が正常もしくは血友病患者となる。女子は、父親の変異のあるXm染色体と母親の変異のあるXm染色体もしくは変異のないX染色体のいずれかを受け継ぐため、生まれてくる女子の1/2が血友病患者(女性血友病)もしくは保因者となる。

図 血友病の伝播様式

画像

石黒 精ほか編. はじめての血友病診療実践マニュアル. 診断と治療社、東京、2012、p.56より一部改変

家族に血友病患者がいないにもかかわらず、突発的に発病者が出ることがある(孤発例)。家族例がいない孤発例は血友病患者の約2~3割程度いるとされており1)、孤発例における遺伝子変異の起源として、次の3つが考えられている。

  1. ① 血友病患者の母親が、その両親のいずれかから、病因遺伝子変異を受け継いだ場合(隔世遺伝)
  2. ② 母親は正常で、血友病患者がde novo変異を持つ場合
  3. ③ 母親がde novo変異の保因者である場合

※:親から受け継いだ変異でなく、その個体で新しく発生した新生突然変異。

出典)

1)篠澤 圭子. 血栓止血誌. 2015; 26(5): 549-556.

参考)

篠澤 圭子. 血栓止血誌. 2015; 26(5): 549-556.
石黒 精ほか編. はじめての血友病診療実践マニュアル. 診断と治療社、東京、2012.

JPN-AFS-1746

ページの先頭へ移動

よく検索されるキーワード