臨床成績 日本人を含む国際多施設共同非盲検第I/III相試験(1001試験)1)
「注意事項等情報」等は電子添文をご参照ください。
本試験は国際共同試験であり、承認時評価資料です。本試験では承認外の用法及び用量での定期補充群が含まれております。本資材では原著との整合性並びに適正使用確保を目的として一部のデータでは承認外の用法及び用量の定期補充群の記載を含めております。承認を受けた用法及び用量については電子添文もしくは以下の記載内容をご確認ください。
1. 試験概要
試験デザイン
国際、多施設共同(53施設)、プロスペクティブ、非盲検、クロスオーバー比較、第I/III相試験
目的
血友病A患者を対象に、以下の項目について評価する。
- エイフスチラの薬物動態(PK)プロファイル
- 出血エピソードの抑制及び治療の有効性
- オンデマンド療法に対する定期補充療法の有効性
- 外科手術時の補充療法の有効性
- FVIIIインヒビターの発現
対象
12~65歳の重症(FVIII活性<1%)血友病A患者 175例[Part 1:27例、Part 2:26例、Part 3:147例(日本人10例)]、うち外科的サブスタディ:13例
- FVIIIインヒビター発現の既往が確認されていない患者
- FVIII製剤の投与日数が150EDを超える男性患者
方法
28日間のスクリーニング期間の後、3つのパート(Part 1~3)から構成された。患者の平均治療期間は8.5ヵ月であった。
Part 1:
全長型rFVIII製剤50 IU/kg単回投与後のPK評価を行い、4日間の休薬期間を経て、エイフスチラ50 IU/kg単回投与後のPK評価を行った。
Part 2:
Part 1の患者のエイフスチラ投与を継続し、定期補充療法及びオンデマンド療法の有効性及び安全性を評価した。
Part 3:
新規患者を対象にエイフスチラによる定期補充療法及びオンデマンド療法の有効性及び安全性の評価、並びにエイフスチラの初回投与後及び反復投与後にPK評価を行った。
定期補充療法 | 治験責任医師の判断によりエイフスチラ20~40 IU/kgを1日おき、20~50 IU/kgを週2~3回、又は他の用量及び投与間隔で投与した。 |
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オンデマンド療法 | 治験責任医師の判断により本治験登録前に同種の出血エピソードに対し使用していたFVIII製剤と同様の用量のエイフスチラを投与した。 |
主要評価項目
有効性
オンデマンド療法 | 4点スケール(「著効」、「有効」、「やや有効」、「無効/反応なし」)に基づいた治験責任医師による出血エピソードの治療成功率※(検証的な評価項目) |
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定期補充療法 | 年間自然出血回数(AsBR)(検証的な評価項目) |
外科的サブスタディ | 4点スケール(「著効」、「有効」、「やや有効」、「無効/反応なし」)に基づいた治験責任医師による周術期止血管理の治療成功率※ |
安全性
ナイメゲン変法を用いたベセスダ測定に基づくインヒビターの発現(0.6BU/mL以上)(検証的な評価項目)
副次評価項目
薬物動態(PK)
- 発色合成基質法及び凝固一段法により定量した血漿中FVIII活性
- Part 1で収集したエイフスチラ及び全長型rFVIII製剤50 IU/kg単回投与後のPKパラメータ[投与後30分の上昇値(IR)、半減期(t1/2)など]
有効性
- 止血が得られるまでの投与回数
- 年間出血回数[総出血(総ABR)、外傷性出血、関節内出血]
安全性
有害事象、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)宿主細胞由来タンパク質に対する抗体の発現など
その他の評価項目
エイフスチラの投与量
解析手法
出血エピソードの止血効果:治験責任医師による総合的臨床評価について、患者内相関を考慮し、一般化推定方程式及びindependent correlation structureを適用し、2項分布及びロジットリンク関数を仮定した反復測定に対する一般化線形モデル(切片項のみを含む)を用い、成功率の95%CIを算出した。95%CIの下限値が70%を超えた場合、治療成功とした。
年間出血回数:AsBRは「365.25×自然出血エピソードの回数/治療日数」を用いて算出した。AsBRについて2群間(定期補充療法群とオンデマンド療法群)に差がないということを帰無仮説とし、Poisson回帰モデルを用いて検定を行った。2群のAsBRの比(定期補充療法群/オンデマンド療法群)を95%CIとともに示した。対数リンク関数を用い、オフセットには対数変換した観察期間を用いた。治療した総出血エピソード(自然、外傷性、又は原因不明)を基にしたABRについて、主要解析と同じ解析を行った。
周術期止血管理の止血効果:治療成功率が70%を超えた場合、治療成功とした。
多重性の制御:本試験における主要評価項目の解析には、多重性を制御するために階層的検定手順を3つの評価項目に適用した。まず、インヒビター発現率の評価を実施し、95%CIの上限値が6.8%未満の場合は治療成功と判定することとした。次に、インヒビター発現率の評価が治療成功の場合のみ、出血エピソードの止血効果の評価を実施することとし、95%信頼区間の下限値が70%を超えた場合に治療成功と判定することとした。最後に、出血エピソードの止血効果で治療効果が認められた場合のみ、年間出血回数について2群間(定期補充療法群とオンデマンド療法群)に差がないという帰無仮説を両側有意水準0.05で検定することとした。
有効性解析集団
定期補充療法又はオンデマンド療法でエイフスチラの投与をそれぞれ1回以上受けた全ての患者 173例
安全性解析集団
本試験中にエイフスチラの投与を1回以上受けた全ての患者 174例
ED:投与日(Exposure day)
評価基準
[出血エピソードに対する止血効果]
●小出血
著効 | 本剤を最初に投与してから約8時間以内に明確な疼痛緩和があった、及び/又は出血の徴候が改善した(腫脹、圧痛の改善及び/又は筋骨格系出血の場合には可動域の増加)。 |
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有効 | 本剤を最初に投与してから約8時間後の時点で明確な疼痛緩和があった、及び/又は出血の徴候が改善したが、完全な消失には2回の投与を要する。 |
やや有効 | 本剤を最初に投与してから約8時間以内にわずかに有益な効果が見られた、及び/又は推定されたが、完全な消失には2回を超える投与を要する。 |
無効/反応なし | 本剤を最初に投与してから全く改善が見られない、又は状態(出血の徴候)が悪化し、完全な消失には他の第VIII因子製剤、クリオプレシピテート又は血漿を用いた追加の止血治療を要する。 |
●大外傷又は生命を脅かす出血
著効 | 止血の程度について、凝固因子欠乏を有しない患者と比べて臨床的に有意な差がなく(同程度の止血が得られる)、推定失血量が同程度の外傷又はその他要因から予想される推定失血量と比べて20%以上増加しない。 |
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有効 | 止血の程度について、凝固因子欠乏を有しない患者と比べて、正常又は軽度な異常がある(わずかな滲出、出血量が若干多く止血までの時間が長い)、又は推定失血量が同程度の外傷又はその他要因から予想される推定失血量と比べて20%~30%増加している。 |
やや有効 | 止血の程度について、凝固因子欠乏を有しない患者と比べて、正常又は軽度な異常がある(わずかな滲出、出血量が若干多く止血までの時間が長い)、又は推定失血量が同程度の外傷又はその他要因から予想される推定失血量と比べて20%~30%増加している。中等度の異常がある(コントロールが難しい中等度の出血)、推定失血量が「有効」と比べて多い。 |
無効/反応なし | 止血の程度について、凝固因子欠乏を有しない患者と比べて、重度の異常がある(コントロールが難しい重度の出血)、及び/又は同程度の外傷又はその他要因から予想される以上に、追加の他の第VIII因子製剤、クリオ製剤又は血漿による止血処置を必要とする。 |
[外科的サブスタディにおける止血管理]
著効 | 止血の程度について、凝固因子欠乏を有しない患者と比べて臨床的に有意な差がなく(他の止血措置を取らず同程度の止血が得られる)、推定失血量が同程度の外科手術から予想される失血量と比べて20%以上増加しない。 |
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有効 | 止血の程度について、凝固因子欠乏を有しない患者と比べて、正常又は軽度な異常がある(他の止血措置を取らず、わずかな滲出、出血量が若干多く止血までの時間が長い)、又は推定失血量が同程度の外科手術から予想される失血量と比べて20%~30%増加している。 |
やや有効 | 止血の程度について、凝固因子欠乏を有しない患者と比べて、中等度の異常があり(コントロールが難しい中等度の出血)、実際の失血量が「有効」と比べて多い。 |
無効/反応なし | 止血の程度について、凝固因子欠乏を有しない患者と比べて、重度の異常がある(コントロールが難しい重度の出血)、及び/又は止血を完了するために、追加の他の第VIII因子製剤、血漿による処置を必要とする。 |
2. 出血時の止血に対する有効性
1)出血に対する止血効果の臨床評価(主要評価項目:検証的解析結果)
有効性解析集団(173例)において、治療を要した出血エピソード数は848件であった。治験責任医師による止血効果の総合的臨床評価は、大部分が「著効」(603/848件、71.1%)もしくは「有効」(180/848件、21.2%)であり、治療成功率(95%CI)※1、2は92.3(88.9、94.8)%であった。95%CIの下限値が事前に規定した70%を上回り、治療効果が検証された。
日本人有効性解析集団(10例)においても、出血エピソードの大多数で「著効」(21/29件、72.4%)又は「有効」(5/29件、17.2%)であり、治療成功率(95%CI)※1は89.7(74.7、96.2)%であった。
※1:「著効」又は「有効」を治療成功とした。95%CIは患者内相関を考慮した一般化線形モデルに基づく。
※2:欠測値は治療不成功としてカウントした。
治験責任医師による出血に対する止血効果の総合的な臨床評価
2)止血が得られるまでの投与回数(副次評価項目)及び投与量(その他の評価項目)
有効性解析集団(173例)において、治療を要した出血エピソード848件のうち793件(93.5%)はエイフスチラの1回又は2回投与で止血が得られた。止血を得るのに要した1回当たりのエイフスチラ投与量及び総投与量[中央値(最小値、最大値)]は31.7(6、84)IU/kg及び34.7(6、1,042)IU/kgであった。
また、日本人有効性解析集団(10例)において、治療を要した出血エピソード数29件のうち24件(82.8%)はエイフスチラの1回又は2回投与で止血が得られ、止血を得るのに要した1回当たりのエイフスチラ投与量及び総投与量[中央値(最小値、最大値)]は33.6(17、51)IU/kg及び39.6(17、370)IU/kgであった。
止血を得るのに要したエイフスチラの投与回数
3. 定期補充療法に対する有効性
1)年間自然出血回数及び年間総出血回数(主要/副次評価項目)
有効性解析集団(173例)において、定期補充療法による年間自然出血回数(AsBR)の中央値[第1四分位値(Q1)、第3四分位値(Q3)]は0.00(0.0、2.4)件/人年であり、オンデマンド療法[11.73(2.8、36.5)件/人年]より有意に低かった(p<0.0001、Poisson回帰モデルによる検定)(検証的な解析結果)。年間総出血回数(総ABR)の中央値(Q1、Q3)においても、定期補充療法で1.14(0.0、4.2)件/人年であり、オンデマンド療法[19.64(6.2、46.5)件/人年]より有意に低かった(p<0.0001、Poisson回帰モデルによる検定)。
なお、定期補充療法に割り付けられた146例中126例(86%)が週2~3回投与であった。
日本人有効性解析集団(10例)において、定期補充療法によるAsBR及び総ABRの中央値(Q1、Q3)は0.00(0.0、1.1)件/人年及び0.00(0.0、1.4)件/人年であった。
年間自然出血回数(AsBR)
出血の種類別年間出血回数
全体の有効性解析集団 | 日本人有効性解析集団 | |||
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年間出血回数 (件/人年) | 定期補充療法 (N=146) | オンデマンド療法 (N=27) | 定期補充療法 (N=9) | オンデマンド療法 (N=1) |
自然出血(AsBR) 平均値(SD) 中央値 (Q1、Q3) | 2.10(4.764) 0.00 0.0、2.4 | 24.84(33.843) 11.73 2.8、36.5 | 1.83(4.268) 0.00 0.0、1.1 | 3.55 3.55 3.6、3.6 |
総出血(総ABR) 平均値(SD) 中央値 (Q1、Q3) | 3.11(5.045) 1.14 0.0、4.2 | 31.14(35.560) 19.64 6.2、46.5 | 2.51(4.556) 0.00 0.0、1.4 | 6.22 6.22 6.2、6.2 |
出血回数が0回であった患者数 | 61(41.8%) | 1(3.7%) | 5 | 0 |
2)エイフスチラの投与量(その他の評価項目)
定期補充療法を受けた患者146例のエイフスチラの月間及び年間投与量の中央値は、356.9 IU/kg及び4,282.9 IU/kgであった。また、週3回投与群(79例)及び週2回投与群(47例)での1回当たりのエイフスチラ投与量の中央値は、30.0 IU/kg及び35.0 IU/kgであった。
4. 周術期止血管理における治療成功率(主要評価項目)
13例の患者において16件の外科手術が実施され、これらは全て外国人患者で行われた待機的手術であった。外科手術時の補充療法での止血効果は、16件全てで「著効」(15/16件、93.8%)又は「有効」(1/16件、6.3%)と評価され、治療成功率は100%であった。
また、周術期の止血管理で投与されたエイフスチラの用量[平均値(SD)]は、術前で68.3(22.16)IU/kg、術中で37.0(11.81)IU/kg、術後14日間で704.0(391.74)IU/kgであった。
5. 安全性
1)インヒビター及び抗体(主要/副次評価項目)
安全性解析集団においてインヒビター発現率(95%CI)は0(0.0、2.1)%であり、95%CIの上限値は事前に規定した6.8%を下回った(検証的な解析結果)。また、CHO宿主細胞由来タンパク質に対する抗体の発現が報告された症例はなかった。日本人症例においても、インヒビター及びCHO宿主細胞由来タンパク質に対する抗体の発現は認められなかった。
2)副作用(副次評価項目)
本剤の投与期間中、安全性解析集団174例中113例(64.9%)に292件の有害事象が認められた。副作用(本剤に関連する有害事象)は174例中13例(7.5%)に認められ、主な副作用は浮動性めまい[1.1%(2例)]及び過敏症[1.1%(2例)]であった。重篤な有害事象は174例中7例(4.0%)に9件(扁桃出血、貧血、血小板減少症、過敏症、血中尿酸増加、食道静脈瘤、ウイルス感染、足関節部骨折、自殺念慮 各1件)認められたが、過敏症を除き、いずれも本剤投与との因果関係はないと判断された。投与中止に至った症例及び死亡例はなかった。
日本人安全性解析集団10例中8例(80.0%)に20件の有害事象が認められ、副作用は10例中1例(10%)に1件(浮動性めまい)認められた。投与中止に至った症例及び死亡例はなかった。
1)社内資料:日本人を含む国際多施設共同非盲検第I/III相試験(1001試験)(承認時評価資料)
6. 用法及び用量
本剤を添付の溶解液全量で溶解し、緩徐に静脈内に注射する。通常、1回体重1kg当たり10~30国際単位を投与するが、患者の状態に応じて適宜増減する。定期的に投与する場合、通常、体重1kg当たり20~50国際単位を週2回又は週3回投与する。
8. 重要な基本的注意(一部抜粋)
8.2 患者の血中に血液凝固第IX因子に対するインヒビターが発生するおそれがある。特に、血液凝固第Ⅷ因子製剤による補充療法開始後、投与回数が少ない時期(補充療法開始後の比較的早期)や短期間に集中して補充療法を受けた時期にインヒビターが発生しやすいことが知られている。本剤を投与しても予想した止血効果が得られない場合には、インヒビターの発生を疑い、回収率やインヒビターの検査を行うなど注意深く対応し、適切な処置を行うこと。
9. 特定の背景を有する患者に関する注意(一部抜粋)
9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 本剤の有効成分及び添加剤、又はハムスター由来蛋白質に対し過敏症の既往歴のある患者
9.1.2 他の血液凝固第Ⅷ因子製剤に対し過敏症の既往歴のある患者
2024年6月改訂