2. 診断
原発性免疫不全症候群を疑う10の徴候4)
1.
乳児で呼吸器・消化器感染症を繰り返し、体重増加不良や発育不良がみられる。
2.
1年に2回以上肺炎にかかる。
3.
気管支拡張症を発症する。
4.
2回以上、髄膜炎、骨髄炎、蜂窩織炎、敗血症や、皮下膿痬、臓器内膿痬などの深部感染症にかかる。
5.
抗菌薬を服用しても2か月以上感染症が治癒しない。
6.
重症副鼻腔炎を繰り返す。
7.
1年に4回以上、中耳炎にかかる。
8.
1歳以降に、持続性の鵞口瘡、皮膚真菌症、重度・広範な疣贅(いぼ)がみられる。
9.
BCGによる重症副反応(骨髄炎など)、単純ヘルペスウイルスによる脳炎、髄膜炎菌による髄膜炎、EBウイルスによる重症血球貧食症候群に罹患したことがある。
10.
家族が乳幼児期に感染症で死亡するなど、原発性免疫不全症候群を疑う家族歴がある。
これらの所見のうち1つ以上当てはまる場合は、原発性免疫不全症の可能性がないか専門の医師に相談してください。この中で、乳児期早期に発症することの多い重症複合免疫不全症は緊急に治療が必要です。
重症度分類1)
原発性免疫不全症候群全体について、中等症以上を対象とする。
重症
治療で、補充療法(阻害薬等の代替治療薬の投与を含む)、G-CSF療法、除鉄剤の投与、抗凝固療法、ステロイド薬の投与、免疫抑制薬の投与、抗腫瘍薬の投与、再発予防法、感染症予防療法、造血幹細胞移植、腹膜透析、血液透析のうち、1つ以上を継続的に実施する(断続的な場合も含めて概ね6か月以上)場合。
中等症
上記治療が継続的には必要でない場合。
軽症
上記治療が不要な場合。
※診断基準及び重症度分類の適応における留意事項
1. 病名診断に用いる臨床症状、検査所見等に関して、診断基準上に特段の規定がない場合には、いずれの時期のものを用いても差し支えない(ただし、当該疾病の経過を示す臨床症状等であって、確認可能なものに限る)。
2. 治療開始後における重症度分類については、適切な医学的管理の下で治療が行われている状態であって、直近6か月間で最も悪い状態を医師が判断することとする。
3. なお、症状の程度が上記の重症度分類等で一定以上に該当しない者であるが、高額な医療を継続することが必要なものについては、医療費助成の対象とする。
PIDを疑った場合における一般検査のすすめ方5)
金兼弘和 他, 原発性免疫不全症における診断のすすめ方―最近の動向―.モダンメディア, 62(4), 22-9, 2016. 図4より転載.
1)難病情報センター, 原発性免疫不全症候群(指定難病65).https://www.nanbyou.or.jp/entry/254(2021年3月31日閲覧)
4)Primary Immunodeficiency Database in Japan(PIDJ): 原発性免疫不全症候群を疑う10の徴候 より一部改変.
http://pidj.rcai.riken.jp/10warning_signs.html(2021年3月31日閲覧)
5)金兼弘和 他, 原発性免疫不全症における診断のすすめ方―最近の動向―.モダンメディア, 62(4), 22-9, 2016.