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PID(原発性免疫不全症候群)

原発性免疫不全症候群「PID」とは

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PID(Primary Immunodeficiency:原発性免疫不全症候群)

1. 疾患1)

概要

原発性免疫不全症候群は、先天的に免疫系のいずれかの部分に欠陥がある疾患の総称であり、後天的に免疫力が低下するエイズなどの後天性免疫不全症候群と区別される2)。国際免疫学会により、現在は416疾患(430遺伝子)が10の疾病に分類されている3)
原発性免疫不全症候群で問題となるのは、感染に対する抵抗力の低下である。重症感染のため重篤な肺炎、中耳炎、膿瘍、髄膜炎などを繰り返す。時に生命の危険を生じることもあり、中耳炎の反復による難聴、肺感染の反復により気管支拡張症などの後遺症を残すこともある。

国際免疫学会による原発性免疫不全症候群の分類2)

  1. 複合免疫不全症
  2. 免疫不全を伴う特徴的な症候群
  3. 抗体産生不全症
  4. 免疫調節障害
  5. 食細胞の数・機能の異常
  6. 自然免疫異常
  7. 自己炎症性疾患
  8. 補体異常症
  9. 骨髄不全症候群
  10. 原発性免疫不全症候群の表現型をとる疾患

原因

多くは免疫系に働く蛋白の遺伝子の異常である。この10年間に代表的な原発性免疫不全症候群の原因遺伝子は多くが解明され、確定診断や治療に役立っている。しかし、IgGサブクラス欠乏症の一部、乳児一過性低γグロブリン血症のように一時的な免疫系の未熟性、慢性良性好中球減少症のように自己抗体によると思われる疾患もある。

症状

主な症状は易感染性である。つまり、風邪症状がなかなか治らなかったり、何度も発熱したりし、入院治療が必要である。重症のタイプでは感染が改善せず、致死的となることもある。好中球や抗体産生の異常による疾患では細菌感染が多く、T細胞などの異常ではウイルスや真菌感染が多い傾向がある。

<参考>
免疫不全症の多くに共通して見られる易感染性は、次のように要約される。

(1)様々な部位の頻回の罹患傾向に加え、個々の感染が重症化しやすく、治癒が遷延する
(2)肺炎、髄膜炎、敗血症など重症感染症の反復罹患
(3)ニューモシスチス、カンジダ、サイトメガロウイルスなどの日和見感染

1)難病情報センター, 原発性免疫不全症候群(指定難病65).https://www.nanbyou.or.jp/entry/254(2021年3月31日閲覧)
2)野々山恵章. 原発性免疫不全症候群. 生体の科学, 71(5), 462-3, 2020.
3)Tangye SG, et al. J Clin Immunol. 40(1): 24-64, 2020.

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